「ギコギコギコ」
昭和30〜40年代のレトロな工作機械が並ぶ小さなアトリエで、今日も糸鋸を使ってコツコツとメガネが作られています。それも、今では数少ない東京のメガネ職人による技をしっかりと受け継いで—-。
たとえば顔の中心にくるメガネのフロントのお話。最近では機械による加工が主流ですが、TEFUは板材を糸鋸でひとつひとつ切り出し、手やすりをかけてゆっくりと仕上げていきます。小さな丁番を埋め込んだり、丁寧に磨いてツヤを出したりと、50を超える工程のすべてが“手仕事”です。アセテートの板材だって、洋服の生地を選ぶように時代の気分に合わせたものを自分たちでせっせと探してきます。
それもこれも、量生品にはない柔らかなニュアンスやテイストを大切にしたいから。
だから、TFEUのメガネはオーダーを受けてからひとつひとつ作っています。フロントとテンプル(ツル)は好きな生地を組み合わせることができるので、たとえばテンプルにヴィンテージ生地を合わせる、なんてことも……。顔の大きさに合わせてテンプルを少し長くしたり、視力が悪くてレンズが分厚くなる人のために、生地を少し厚くしてレンズの厚みを隠すことだってできるのです。
……そしてもし、使っているうちに丁番がグラグラしてきたり、ツヤがなくなったときはアトリエにお持ちください。私たちがすぐにお直しします。たとえテンプルが折れても大丈夫。
だって、また作ればいいのですから。
特別なインパクトはないけれど、どこか柔らかく、どこか懐かしい。
何気ない日常にすんなりと溶け込む—-。
それがTEFUのメガネです。
テキスト:藤井たかの
つくり手
富田顕寛
眼鏡専門学校を卒業後、千葉県のアイウェアショップに勤務。販売や接客を学びながら、東京のメガネ職人に従事し、メガネづくりのイロハを学ぶ。2009年からポンメガネのスタッフに加わり、接客や検眼の知識とメガネづくりの技術を活かしてTEFUの製造を行う。